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亡念のザムド小話 2 [いろいろ小話]

アニメでは描かれなかったところでクジレイカとあの人は気持ちが通じていたに違いない・・・!と、第二十話を見て思いついた小話を一つ。

クジレイカのザムド化は綺麗で、悲しすぎる。

 ↓ からどうぞ・・・。

懐かしい光景が脳裡に浮かんだ。
タツミの丘で遊ぶ天女様と姫様。それを見守る先代の長。
そして少し離れた場所で警衛につく自分。
あの日の空は青い色をしていた。


また違う場面が浮かんだ。
俺は姫様の手を引いて歩いていた。
その日、姫様は天女様を探して郷中を駆け回っていた。天女様はひとりでどこかへ出かけることが時折あった。俺はそれを何にも捕らわれない気質と捉えていたのだが、今思うと優れたタマヨビであった天女様は、遠くから聞こえる“声”の主を探しに郷周辺を探索していたのかもしれない。
しかし、そんなことは幼い姫様にわかるはずもなく、一人ぼっちになったと思った姫様は「ねえさまはどこ?」と、天女様が戻ってくるまで郷中を探すことになる。郷中を駆け回り、何度か転び、膝小僧を赤くする。それでも天女様を探し続ける。大人たちは姫様を放っておいたが、俺は気が気じゃなかった。
夕刻、俺は走りつかれた姫様が、ポツンと一人大きな石の上に腰掛けているのを見つけた。
「天女様は見つかりましたか?」
声をかけると、姫様は首を横に振った。
「森にでも足を伸ばしておいでなのでしょう。もう時期帰られますよ。」
「・・・ほんとう?」
姫様が顔をあげた。
「もう日も暮れます。夕餉の時間ですから、天女様もお腹を鳴らして戻られることでしょう。」
俺がこう言うと、
「ねえさまのおなかも、ぐうぐう言うのかなぁ?」
姫様は笑った。
「さあ、姫様も帰りましょう。私が家までお送りします。」
俺が右手を差し出すと、姫様は石から降りて俺の手をとった。
「膝の傷は痛みますか?」
「ううん。」
俺は姫様の前に屈んで、膝の傷を見てみた。血は出ていないが、地面で擦り切れ赤くなっている。痛くないなんて、うそだ。
「・・・痛かったら本当のことをいっても・・・泣いても構わないのですよ?」
姫様は唇をぎゅっと結んだ。
「・・・だって、かかさまががまんしなさいって。泣いたりしたら、ねえさまみたいになれないって。」
俺は思わず手を強く握る。
姫様の母君は、天女様に気をつかいすぎて、実の子である姫様を蔑にしすぎる。
俺はポケットからハンカチを取り出し、姫様の膝に巻きつけた。そして、ハンカチの上からそっと傷を撫で、
「痛いの痛いの・・・飛んできた~!」
わざとらしいかなと思いつつも、自分の足を押さえて大げさに「うう・・・」と呻く。
「いま、姫様の痛みは私の脚に飛んできましたから、姫様はもうこれで大丈夫ですよ。」
上目づかいに見ると、姫様は目を丸くして俺を見ていた。
「姫様、今度痛いところがあったら私に言ってください。姫様の痛みはぜ~んぶ貰い受けますから。」
姫様は小さな声で「ありがとう」と、今にも泣きそうな笑顔で言った。俺は立ち上がり、姫様の歩調に合わせてゆっくりと歩きだした。
その日の空は、夕日に染まった橙色をしていた。



また違う場面が浮かんだ。
今度は灰色の雲だ。いや、煙か、砂塵か。
―――つまりこれは現実か。
俺は軽く頭を振って、体を起こした。瞬間、右足に激痛という言葉では生ぬるい痛みが走った。
目を疑った。自分の足がありえない方向を向いている。先ほどの銃撃のせいだと思い当たるには、そう時間はかからなかった。
咄嗟に後ろを振り向く。
姫様のいる本殿。
無傷とはいえないが、まだ形を保っているのを見、ほっと胸を撫で下ろす。
こちらの銃弾は尽きた。もはやオンゴロの加護もない。ここから動くこともできぬ。
ASP部隊の銃口が俺に向けられる。
狙いが本殿ではなく、俺ならば。
―――むしろ願ったり叶ったりだ。
自然と笑みが浮かんだ。

姫様が俺に痛みを訴えることなど一度もありはしなかった。
だが、姫様の痛みは、全部俺に。
あの時、そう決めた。
貴女のためなら、この身が砕けようと惜しくはない。

「あなたと生きられたことだけが私の誇り。」




【あとがき】
わたし的には、アキユキハルよりも、クジレイカとあの人の方がツボでした。
あの人は、村のためでなく、クジレイカのためだけに戦っていたんですよね・・・。
みんなと同じように逃げれば良かったのに、クジレイカ一人をあの場に残して逃げるのが我慢できなかったんだ・・・[もうやだ~(悲しい顔)]
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