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土そよ小話 2 [いろいろ小話]

銀魂の小話です。
土方さんとそよ姫のお話。新婚話の前編です。

 ↓ からスタートです。

惚れた女もいた。
幸せになって欲しいと願った女もいた。
だけど“俺”が幸せにしたいと思ったのは、彼女ただ一人だった。



螺旋の接吻



雨戸も締め切った薄暗い部屋の中、仄かなランプの灯り一つ。
外同様、部屋の中は怖いくらいに静かだ。10畳ほどの広さの部屋に布団は二組敷いてあり、その一つの上に俺は胡座をかいていた。
今日という日に俺とそよは晴れて正式に所帯をもつことになった。
つまりあれだ。
今夜は新婚初夜というやつだ。
俺は先にひと風呂浴び、いまはそよが風呂に入っている。ただ待つだけの状態ではあるが、苦痛という訳でもない。
そう、新婚初夜。
なんと甘い響きだろうか。
実際に甘いし、甘くする気満々ではあるのだが、字面を思い浮かべるだけで自然と顔が緩んでしまう。
仕方ねえだろ。散々長い道のりだったんだから。

自分の気持ちを認めるのはわりと早かった。彼女に想いを告げる決心をするのに少々時間がかかり、告げた後彼女が頷いてくれるまでにまた時間がかかった。真撰組(特に近藤さん)に迷惑をかけ、万事屋に大きな借りをつくり、なんとか周囲に認めてもらうまでになったのが彼女と出会ってから3年も過ぎたころ。プロポーズし結婚を認めてもらうまでにはそれから2年かかった。
改めて考えると、俺って根気強えな。
出会ったころは未成年だった彼女も、今では立派に成人した。成人するまで結婚は許されなかった、とも言えるが。ついでに言うとお偉い方は、自然消滅を狙ってたってとこなんだろうな。
そうはいくかよ、バカヤロウ。
彼女は俺が幸せにする、って決めたんだから。こうと決めた俺はしつこいんだよ。

・・・って、昔話なんざぁどうでもいいな。
だが入浴中の新妻を思い、これから訪れるであろう薔薇色の時間に思いを馳せて暴走しちまう失態を見せるよかは良いだろう。
風呂、と言えば。
入浴前のそよを思いだし俺はほくそ笑んだ。



俺が風呂から上がると、そよが缶ビールを用意してくれていた。礼を言いつつ受け取り、俺は引出しから昼間渡しそびれていたあるものを取り出し、そよに手渡した。
家の鍵である。
小さな掌にのったそれを見て、そよはきょとんとしていた。
「この家の鍵だ。今日から貴女の家はここなのだから必要だろ?」
「・・・はい!」
パッとそよの顔に喜びが広がった。
「外出するときは鍵をかけて出るんだぞ?ここは城とは違って危険が多いから、家に・・・」
「わかってます。お家にいるときも内側から鍵をかけるんでしょう?」
そういって鍵をぎゅっと握り締めた。
「わたしお家の鍵って憧れていました。“家族”しか持たない特別なものですもの。わたし、宝箱に入れて大切にしますね!」
そよは満開の笑顔を俺に向けた。ったく、無邪気なお姫様だ。
「宝箱に入れてちゃどうしようもねえだろう」
俺が笑うと、そよは「あ」と小さな声を出し、ゆっくり掌を開き、もう一度鍵を見つめた。
「・・・そうですね。でも大切に使います。」
なんの装飾も施していない銀色の鍵。たかが鍵一つ、ここまで感激する人間はいないだろう。そよは瞳を輝かせ、ちっぽけな鍵をあたかも高価な宝石のように見つめている。
ほんとうに嬉しそうな幸せそうな横顔を見て、俺は胸が高鳴った。

「そよ・・・」
俺はビールを置き、そよを抱きしめた。身長差が20センチ近くあるため、そよの体はすっぽり埋まってしまう。そよの髪に口付け、少しだけ体を離した。
左手はそよの綺麗な黒髪を撫で、右手は顎のラインをなぞる。そのまま少し顎を上に浮かせ顔を寄せると、そよは耳まで赤くしてすぐに視線をそらした。
左手を髪から背中へ下ろしていき、腰をぐっと引き寄せた。小さな悲鳴が聞こえたが、この際無視する。
そよは体を強張らせていたが、ゆっくりと瞳を閉じた。俺はまず額に唇を落とし、瞼、両頬、鼻先とつづけ、そして唇に口付け抱きしめた。
唇を触れ合うキスは今日が初めてではない。
もちろん半日前に誓いのキスとやらもしたし、城の広すぎる部屋の中でも、護衛中二人きりになった時も、過去に何度も口付けを交わしていた。
これからのキスはあのころと全く違う。
彼女は徳川そよではなく、土方そよなのだ。
みんなの姫ではなく、俺だけの大切な愛しい愛しい姫。
俺の胸の中にある温かな体は、俺だけのものだ。




【あとがき】
土そよR15企画に参加したときにアップしていただいた作品です。
お題は、「螺旋の接吻」。
“螺旋”とつきますので、今回のきすじゃ終わらないのであります(笑)。
・・・でも大したことはありませんよ・・・(^^;)。
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