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しんあい小話 6 [いろいろ小話]

くれよんしんちゃんの小話です。
高校生のしんちゃんとあいちゃんで、クリスマスの話の後編になります。

 ↓ からスタートです。

クスっとしんのすけは笑った。
「そうだと思った。」
からかう風ではなく、思わず笑みがこぼれたという笑い方だった。
「黒磯さん。」
あいの涙が一瞬とまる。ボディガードなのだから居て当たり前なのに、暗闇の中に控えているとは思わなかったのだ。
「あいちゃん、2時間くらい借りてもいいかな。風間くん家でやっているパーティに行きたいんだ。」
始めて聞く話にあいは目を数回瞬かせた。
「・・・さて、どうでしょうか。」
背後から黒磯の低い声が聞こえてくる。
「あい様は気分が優れないとのことで、先程から自室で休んでおられますから。」
「・・・え?」
難しい言葉を使われたわけでもないのに、あいは意味を理解するのに少し時間がかかった。
「わたしには答えようがありませんな。」
「・・・黒磯・・・。」
ふわりと、あいの肩にコートがかけられる。
「裏口に車を用意してあります。あい様、お気をつけて。」
振り向いたあいの目に、優しく微笑む黒磯が映った。
『どうぞ、楽しんでいらしてください。』
黒磯の心の声が聞こえた。
あいの瞳からまた大粒の涙が溢れだす。
「ありがとう、黒磯!大好きよ!」
あいに綺麗な白いハンカチを渡し、黒磯は「さあ、お早く」と促した。
「しんのすけ様、お預かりしていたものを、いま。」
黒磯は肩にかけていた袋から紙袋を取りだした。受け取ったしんのすけは、あいにそのまま手渡す。
「あいちゃん、それに履き替えて。」
あいが開けると、中にはラインストーンが施されている赤いスニーカーが一足入っていた。
「可愛らしい。」
「・・・クリスマスプレゼント。」
ぶっきらぼうなしんのすけの声。そっぽを向いているその頬は、微かに赤くなっている。
まさかのサプライズだ。
―――しん様があいのために選んでくれたクリスマスプレゼント!あいのためにクリスマスプレゼントを選んでくれた!
あいは感激のあまり何も言うことができない。
あいのキラキラと光り輝く熱烈すぎる眼差しに耐えきれず、しんのすけはくるりと背中を向けた。


「さあ、行こう。」
差し出されるしんのすけの手に、あいは最高の笑顔で手を重ねた。
「行ってらっしゃいませ」
黒磯の言葉を背中で聞きながら、二人は走りだす。
「しん様、しん様!パーティを抜け出すなんて、わたし、信じられない!夢見ているみたい!」
興奮しているあいは、はぁはぁと息を切らしながらも話し続ける。
「しん様、このスニーカーとても軽くて走りやすい!足も全然痛くならないわ!このまま、空だって飛べそう!」
急にしんのすけの足が止まった。グイと手を引っ張られるような形であいも立ち止まる。
「駄目だよ。」
久しぶりに聞く、真摯なしんのすけの声。
「飛んで行ったら駄目だ。」
月明りに照らされたしんのすけの顔は、思った以上に真剣だった。
あいは驚いた。同時に胸にじんわりとあたたかいものが広がっていくのを感じた。
「大丈夫、あいはどこにもいきませんわ。」
つないだ手の上に、あいはもう片方の手を重ねる。
「いつだってしん様のお側におります。」
微笑むあいに目を細めるしんのすけだったが、照れ隠しで「・・・行こっか。」と素っ気なく応える。
あいは大きく頷き、二人は裏口へ向かった。


「しん様!」
「ん?」
「大好き!」
「・・・知ってる。」




【あとがき】
わたしが書くしんちゃんは、あいちゃんに甘いですなぁ・・・。
わたし、寝室オチをよくやりますけれど、しんあいに関しましては、それができない!
ピュアピュアすぎてできない!
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