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ルナミ小話 2 [いろいろ小話]

メリークリスマス~[ぴかぴか(新しい)]

ONE PIECEの小話です。
ナミの(あったかもしれない)クリスマスの思い出の話です。

 ↓ からスタートです。

今日はクリスマス。
麦わら海賊団も貴人の生誕を祝福するにかこつけて。
「メリークリスマス~!!!」
乾杯の声とグラスの音が船内に響き渡った。



サンジがいつも以上に腕によりをかけて作った料理を食し、お酒を飲み、みんなで歌って、笑って、踊って、ゴーイングメリー号は大騒ぎであった。
ブルックのバイオリンをBGMに、ゾロとサンジはいつも通り喧嘩をしており、フランキーは一発芸を披露し、負けずにウソップもばればれの手品を披露。チョッパーは大笑いし、ロビンは静かに微笑んでいる。
ナミもみんなの様子を見て笑い、「ちょっと夜風にあたってくるね」と、甲板に出ていった。

ふぅと小さく息を吐き、ナミはみかん畑に足を向ける。
元気に育っている樹木に目を細め、みかんを幾つかもぎり、腕に抱えて甲板に降りて行った。
腰を降ろし、みかんを床に置く。その中から綺麗な形をしたみかんを4つ選び、正方形に並べ、そして真ん中にもう一つみかんを乗せた。
「メリークリスマス・・・だね。」
ナミは膝を抱え、寂しく微笑んだ。
視線の先には黒い海がどこまでも広がっている。
ココヤシ村はどっちだろうと、方向を確認しようとしたとき。

「ナミ。」

全然気付かなかった。
振り返るとルフィがいた。
いつになく真剣な表情でルフィが立っていた。
「ルフィ、何か用?どうかした?」
「いや・・・。」
珍しく歯切れが悪い物言いだ。
「はっきり言いなさいよ、あんたらしくもない。」
「・・・便所から戻ったらナミがいなかったから・・・どっか行っちまったのかと思って。」
ナミはきょとんとした。
「ここは海なんだから、どこにも行きようがないじゃない。」
そう言って笑おうとしたが、以前大海の真っただ中にいたのに連れ去られたことがあったことを思い出し、やめた。
「・・・なにしてるんだ?」
「ん・・・ちょっとね・・・。」
ルフィはナミの隣に座って、目の前の小さなみかんの山を見つめた。

こういうとき、ルフィのまっすぐな瞳が、好きなのか、苦手なのか、ナミにはわからなくなる。
多分ルフィはナミに説明を求めてなどいない。ただ、じっと見ているだけだ。
それを居心地悪く感じるのは、ナミの側の問題だ。
「・・・プレゼントの話よ。」
沈黙に耐えられなくなり、ナミは口を開いた。



「・・・うちに来るサンタさんはね。」
ナミは一呼吸おいてから話し出す。
「毎年みかんを5個プレゼントしてくれるの。ノジコもあたしも、そんなの頼んでいないっていうのに。ノジコと一緒に『サンタさんは女心をちっともわかってない!』って文句を言っていたわ。そしたらベルメールさんが『サンタさんはあんたたちの“みかんを食べて綺麗になりたい”っていう深層心理を読んだのよ』って言うの。」
ナミは当時を思い出し、くすりと笑った。
「そしてね、テーブルにみかんを段々に重ねて、『ほら、こうするとスペシャルなクリスマスみかんケーキじゃない。あんたたち良かったわね』って。・・・無茶苦茶よね。」
それでも文句を言い続けると、ベルメールは「いいからお食べ!」と二人に拳固を食らわせた。しぶしぶ食べ始めると、ベルメールは「ほら、美味しいだろ?」と満面の笑みを浮かべる。
ナミとノジコは、それで負けだ。
二人にとってベルメールの笑顔に勝るものはない。結局、二人は大きく頷き、笑ってみかんを食べるのだ。

―――もう、遠い昔の話だ。

「だからかな、わたしにとってクリスマスって、『みかんがたくさん食べられる日』なの。」
アーロンたちといた時もこっそり一人でスペシャルみかんケーキを食べた。海賊相手の泥棒をしていた時もそう。
楽しくて幸せな思い出を胸に抱きながら、涙をこらえながら、食べた。
「ただそれだけの話よ。」
ナミは夜風になびく髪を耳にかけながら、ルフィに微笑んだ。
ルフィはなにも言わずに立ち上がり、ナミに麦わら帽をかぶせた。
「ルフィ?」
後ろ姿を目で追うと、ルフィはみかん畑で足をとめる。
「ナミ。」
「なに?」
「この木、俺にくれ。」
ルフィは畑の隅に芽吹いた苗を指さして言った。
「だめよ、前にも言ったでしょう、畑に勝手に」
「俺が育てる。」
ルフィはナミの言葉を遮り、続けた。
「俺がこいつをでっけえみかんの木に育てる。みかんの実がたくさんなるようなでっかい木にする。」
ルフィのまっすぐな瞳がナミを見た。

「そんでナミに美味いみかんを毎年食わせてやる。」

ナミは目の前にあるミカンを一つ、ルフィに投げつけた。ルフィは難なくそれをキャッチする。
「・・・あんた、みかんの栽培方法知ってるの?」
「知らねえ。」
「・・・どうやって育てるつもり?」
「ナミに教えてもらう。」
ナミはみかんをもう一つ、投げた。
「でも安心しろ。絶対美味しくする自信はある。」

ひどい男だと、ナミは思う。
どうしてルフィはいつもこうなのだろう。
我儘で自分勝手で。
こちらの気も知らないで、言いたい放題言って。

「だから一人になろうとするなよ、ナミ。」

―――欲しい言葉をくれる。

ナミは下を向いたまま、手を固く握りしめていた。
ルフィの戻ってくる足音が聞こえても、手を緩めることはなかった。
ふと気付くと、みかんが目の前にあった。
ナミの手元にみかんが並べられていく。ひとつひとつ段々に重ねられて、高く積み上げられていく。
それは遠い昔に見た幸せなケーキと、とてもよく似ていた。




【あとがき】
「STRONG WORLD」がルナミだった~♪
ルフィはあれ以降、何気に視界の中にナミがいないと心配になる・・・とかだったらいいな。



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