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葛葉ライドウ小話 5 [ライドウ小話]

温泉の小話で、鳴海さん視点です。
一緒に風呂入ってますがライ鳴ではありませんです(笑)。ライ伽耶~。


よろしければ「続きを読む」からどうぞ~。



「ふあ~、いい湯だなあ~。」
我ながらオヤジ臭いセリフを吐いているという自覚はある。
だが、思わずそう口にしてしまうくらい、槻賀多村の露天風呂はいいお湯だった。
「なあ、そう思わないか、ライドウ。」
「はい。」
俺は頭に載せた手ぬぐいを押さえ、ライドウを見た。
湯気の中でも、相変わらず無表情なのがわかる。しかし、無表情だが不機嫌ではない。ライドウのそんな微細な表情を読み取れるのは、頭脳明晰美男子探偵である俺・鳴海の他にはおるまい。ただし、ライドウの相棒である猫のゴウトちゃんは除く。
だが、こんな天才的な俺にもわからないことがある。それは、
「・・・なんで学帽被ってんの?」
「気にしないでください。」
いや、気になるってば。露天風呂に入って、なにか頭に載せるっていったら俺を倣って手ぬぐいでしょ。
でもまあ、なにか事情があるのかもしれない。もしかすると悲しい事情ってやつが。放っておくことにしよう、うん。
俺は目線をライドウの背後に移す。少し離れた岩の上に見慣れたものが置いてあった。
「・・・刀は錆びるんじゃないのか?」
岩の上にはライドウ愛用の刀があった。湿気防止のつもりか、布でぐるぐると巻かれている。そんな手間かけるなら、持ってこなければいいのに。
「非常事態に備えて。」
ライドウは淡々と答えるが、俺としては山猿が咥えて持って行っちまう可能性の方が高い気がする。いや、でもこれも放っておこう。
学帽といい、刀といい、葛葉一族には俺にはわからん拘りがあるのかもしれない。いや、きっとあるに違いない。あるってことにしておいてくれ。
「それにしても、こんないいお湯、俺たちだけで独占しちゃって贅沢だよな~。」
ぐるっと見まわすと、今、この場所には、俺とライドウの二人だけ。
たまたまなんだろうけど、これも幸運ってやつ?俺の日ごろの行いが良いからだ。そうに決まっている。
俺は気が緩み、つい、こんなことを口走ってしまった。
「そうだ、今度、伽耶ちゃんも連れて来よう。」



大道寺伽耶ちゃん。
セーラー服がとてもよく似合う美少女で、ライドウとは少なからず思いあう仲だ。
ライドウの後見人としてはなんとかしてやりたいところなんだが、こういうのは本人たちの問題だ。
大人は若者を黙って見守るのみ。『ああ歯痒いったらありゃしない』なんて言ったりして、若人の苦悩を温か~く見守るのが俺たち大人の役目なのだ。
「そういや伽耶ちゃん、ずいぶんと髪伸びたよな。」
あの事件後、短かった髪はもう肩に届くくらいの長さになっていた。短い伽耶ちゃんも可愛かったけど、やっぱり長い髪がいい。俺は断然そう思う。
「伽耶ちゃん、温泉に来たら湯に髪がつかないように髪の毛をあげるだろうな、こう、細い指で髪をくるくるっと巻いて。ライドウ、女の子の指って、ときどき男の俺たちには真似できない不思議な動きをすると思わないか?」
俺は目を閉じ、カフェーの女の子たちが店の隅っこで、あっという間に髪の毛を結ぶ様を思い浮かべた。
「伽耶ちゃんは色が白いから、温泉に入ったら頬が赤くなって、きっと林檎みたいになるぜ。」
ああ、それはとてもいい。
「湯気の中、浮かび上がる美少女の柔肌。赤みのさした頬、白い首筋。そして項・・・。そりゃあもう、色っぽ」

「い」と同時に、空気の切れる音がした。

目を開けると、今まで頭に乗っかっていた手ぬぐいが湯の中に落ち、その上に見慣れた癖っ毛がぱらぱらと散らばっているのが目に入る。

・・・なんじゃこりゃ~~~~!?

「・・・見損ないましたよ、鳴海さん。」
白い湯気の中、黒い影が低い声とともに近づいてきた。
え、ライドウ!?お前いつの間に、刀なんか持ってんの!?いつ取ってきたの!?
なんにしても、俺の貴重な髪の毛を無駄にしやがったのはお前か。
おいライドウ!と怒鳴りたかったのは山々だが、尋常じゃない奴の雰囲気にのまれ、湯の中、俺は思わず後ずさる。
「ええと、ライドウ、お前なに怒ってんの?」
ライドウの目がギラっと光った気がする。
「・・・淫らな・・・伽耶さんでそんな破廉恥な空想を・・・!」
淫ら・・・?破廉恥・・・?俺、そこまで変なこと言ってたか?普通だよな。成年男子として、あくまで普通な発想をしたまでのことだよな?・・・お前、俺の言葉でどんな妄想したんだよ!
「待て待て待て待て待て、俺は、ただ」
伽耶ちゃんの色っぽさをだな・・・って伝えようにも、ライドウ聞く耳持たず。
水しぶきをあげて、黒い影が襲いかかってきた。
「問答無用!その煩悩、断ち切る!」



「二人とも何してるの!旅館の人たちに迷惑でしょ!」
俺とライドウの追いかけっこは、旅館の女将に泣きつかれたタヱちゃんが駆け込んでくるまで続けられた・・・。




【あとがき】
一応鳴海さんも優秀な軍人だったんだから、ライドウの攻撃を避けることはできるはず・・・(笑)?
次回は雷堂くん版温泉小話です。
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