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土そよ小話 5 [いろいろ小話]

銀魂の小話です。
土そよに巻き込まれる山崎くんのお話。

 ↓ からスタートです。

流行りの喫茶店でアフタヌーンティ。歌う曲がなくなるまでカラオケ三昧。有名デパートでウィンドウショッピング。
町に降りたら、したいことはたくさんあった。あちこち行きたい場所はたくさんあった。
でも、たくさんある中で、一番したいこと。
それは、『働くこと』であった。



ここ2週間、土方の機嫌がすこぶる良くないことを、山崎は気が付いていた。
書類の誤字脱字くらいならまだかわいいもの。ちょっとしたことで隊士を呼びつけるは、当たり散らすは、しまいには切腹を申し伝えるは。市中見回りの集合時間に1分遅れただけで、屯所裏でスクワットをさせられた隊士もいると聞く。
「山崎さん、なんとかしてください!」
入隊したばかりの若い浪士らに涙ながらに訴えられても、山崎にはどうしようもなかった。
機嫌を直せるとしたら、一人。それは土方の奥であるそよだけであろう。
だが、今回それは難しい。
そもそも、土方の風向きは、そよが2週間前からアルバイトを始めたことからあやしくなったのである。

「十四郎様!」
2週間前、そよが珍しく屯所へ土方を訪ねてきた。そよは嬉しさを隠しきれないようで、顔には笑みが浮かんでいた。
「珍しいな、どうした?」
土方の顔もついつい緩んでしまったようで、それを目にした山崎は見咎められる前に視線をそらした。
「夢が叶ったんです!」
「夢?」
土方も『夢』については初耳だったようで、妻に尋ねた。そよは頷き、元気よく答えた。
「アルバイトが決まったんです!」
「ああ、アルバイトか。・・・って、おいぃぃ、アルバイトだぁ!?」
予想外の答えに、土方は持っていた煙草を落としかけた。
「へえ、アルバイトですか、良かったですね、そよ様。」
「はい、ありがとうございます。」
にこにこと会話する山崎の後頭部を、「良かったじゃねぇよ」と土方はひっぱたいた。
「アルバイトってなに、いつから、どこで!!」
土方からの矢継ぎ早の質問にそよは慌てることなく答えた。
「明日から、万事屋さんで。」
「よ・・・」
土方が発したのはたった一言。これっきり。“よろずや”の4文字に土方が愕然としているのが、山崎にはわかった。
「前にわたしが『働いてみたい』って言ったのを神楽ちゃんが覚えてくれていて、銀ちゃんさんにそれとなく聞いてくれたんです。」
そよの顔に喜びが広がるのと反対に、土方の顔は段々険しくなっていった。
「そうしたら、『電話番をしてほしい』『よかったら明日からでも』、って言ってくださって。」
「そ、そうですか~、でも、あれですね、知っている人がいる職場で良かったですね~。」
山崎はわざと大声を張った。
まったく知らない人間のいるところでそよが働くよりは土方だっていいはずだ。俺、ナイス、フォロー!山崎は自賛した。
「・・・そうだな。」
山崎の一言が効いたのか、土方はため息をつきながらではあるが頷いた。
「急な話で驚いたが・・・そよ、明日から頑張れよ。」
「はい!」
夫からの励ましの言葉にそよは満面の笑みを浮かべた。
明日に備えて事務用品を買いに行くというそよの背中を見送ったあと、土方は唐突に山崎に尋ねた。
「山崎ぃ・・・お前の趣味ってなんだっけ。」
「へ?ミン」
「たしか悪戯電話だったよなぁ?」
『ミントン』と言うよりも早く、土方が答えた。
「ちょっ、副長!なに言ってるんすか!」
反論しかけた山崎の頬を土方は掴む。
「いんや、お前の趣味は悪戯電話だ、しかも性質の悪~い悪戯電話だ。」
間近に迫ってくる土方の目はちっとも笑っていない。いや、そもそも山崎にとって笑える冗談ではない。
「・・・明日から忙しくなるな、おい。」
内心『た~す~け~て~』と叫びながら、山崎は涙目で頷くしかなかった。

・・・そして今に至る。
山崎は1時間おきに万事屋に電話をかけることが仕事となってしまった。
電話をかけた後は、もちろん土方に「そよ様が出られましたよ」と報告をする。自分の奥方が外回りに出ていないことを確認し、土方はとりあえずは満足をする。あくまでも、とりあえずだ。しばらくすると、また苛々が発生する。発生すると隊士たちに飛び火をする。飛び火をすると山崎の胃がきりきりと痛みだす。
―――こういうときに限って沖田さんがいないなんて・・・。
近藤について江戸を留守にしている沖田を恨むのもどうかと思うが、今の山崎には逃げ場がないので勘弁してもらいたい。大いに恨んでやる。
「おい、山崎。」
「は、はい!?」
土方は顎で時計を指す。
前回の報告から早1時間過ぎた。無理やり趣味にさせられた悪戯電話の時間だ。
山崎は肩をがっくり落とし、携帯のリダイヤルボタンを押しながら裏へと移動した。



受話器をそっと戻し、そよはぐっと手をにぎりしめる。
「・・・また悪戯電話でした。みなさんのお仕事が滞らないよう水際で食い止めるため、電話番としてわたし頑張ります!」

・・・自分の計画した電話作戦が、却ってそよの電話番魂に火をつけたことに土方は気づいていなかった。




【あとがき】
そよちゃんは万事屋と仲が良いといいな~。・・・と言うわりに、万事屋の出番はない(笑)。
それにしても、ナイトレイドの遊佐さん家のお嬢さんはそよちゃんに似ている・・・。ときめく!
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