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葛葉ライドウ小話 1 [ライドウ小話]

とうとうライドウの小話にまで手を出し始めました・・・(^^;)。
内容は、ライ伽耶話となっております。前編です。
でも伽耶ちゃんはまだ出てきておりません・・・。



よろしければ「続きを読む」からどうぞ~。



頬に当たる冷たい春風が心地よい。
自然と足早になる。
隣を行くゴウトの眼差しが、心なしか揶揄を帯びてはいるが、構ってられるか。
身体よりも先に、心はもうとっくに目的地に着いている。
そう、坂を登った先にある、あの洋館へ。



銀楼閣の窓から見える空は、雲ひとつない晴天。風も穏やかで、ぽかぽか陽気。風に桜の花びらが舞う様は、まさに春!
春満開の帝都である。
「いやぁ、今日も帝都は平和だねぇ。」
俺、鳴海昌平は平和な帝都を背景に、所長席に座って鳴海スペシャル(珈琲)を飲んでいた。
「平和なのはいいことだけど、鳴海さん、そんな呑気なこと言っていたら、商売上がったりじゃなくて?」
こう可愛くないこと言うのは、ソファに腰掛けるタヱちゃん。君こそ取材に行かずにここで油売ってていいのかい?
「いいの、いいの。依頼を成功させるための苦難、妨害を跳ね返すための苦闘、依頼人に時には残酷な真実を伝えるための労苦を思えば、ご褒美みたいなもんさ。」
なんて、“如何にも”なことを言ってはみるが、種を明かせば前回の報酬が思った以上に良かったからだったりするのだが。
「たまにはの~んびり過ごそうじゃないの。なぁ、ライドウ?」
俺は先ほどから黙っている、弓月の君高等師範學校学生兼探偵見習い兼悪魔召喚師であるライドウに話を振る。
「・・・・・・・・・・。」
返事はない。ライドウは俺の正面、つまり探偵社入り口脇に立っていた。壁に背を預け、腕を組んでじ~っと俺を見ている。
「な、ライドウ?」
もう一度話を向けたが、返事はない。しかも視線が険しい。おいおい、尊敬すべき所長に向ける視線じゃないよ、それ。
「・・・たまに、なら。」
ぼそっと吐いた言葉は、これまた可愛くない。タヱちゃんは「そうよねぇ」なんて相槌を打ってる。
「ライドウ、それじゃまるで俺が年がら年中のんびりしてるみたいじゃないの。」
するとゴウトが、まるでそうだと言わんばかりに「にゃぁ」と一声鳴いた。ぷっ、とタヱちゃんが吹き出す。ええい、主人に似て可愛くない猫め!
「ゴウトもそうだと言っている。」
わざわざ猫語を通訳せんでもよろしい。ほんと可愛くないね、ライドウ。里に戻って、無表情に一層磨きがかかったんじゃないか?
まあ、こいつが不機嫌な理由はとっくにわかっているので、スバリ、言ってみる。

「・・・ったく、大道寺家売却のことは俺に怒ったってしょうがないだろう?」



「俺はね、ちゃんとライドウに知らせようとしてたよ?でもお前の方から『もう手紙は結構』って文を寄こしてきたじゃないか。」
「・・・そんなことは初耳だ。それに鳴海さんの手紙は前置きが長い。」
ライドウの視線が一層険しくなったのは、俺の気のせいか・・・?
「ライドウが帝都を忘れないよう、事細かに日々を記していたというのに、その気遣いを分かってもらえないとは嘆かわしいね。」
「・・・カフェやダンスホールでの武勇伝が?」
「立派な情報収集だ!」
あ、今一瞬タヱちゃんの目が険阻になった。全くライドウ、滅多なこと言うなよ!
「大道寺伽耶さんかぁ・・・」
ふとタヱちゃんがしみじみといった態で言う。
「そうか、ライドウ君が帝都にきて初めてのお仕事だったものね。依頼人のその後を気にするなんて、ライドウ君は誰かさんと違って仕事熱心ね。」
タヱちゃん、ひどい言い様じゃないか・・・。
「俺だって、伽耶ちゃんのことは気にしてるさ。」
「・・・・・・。」
ライドウ、眼差しで「嘘だ」というのはやめなさい。
「俺は、ライドウがなんらかの手段で伽耶ちゃんと連絡を取っているかとも思っていたんだぜ?」
俺がこう言うと、ライドウの肩がぴくっと動いた。おお、もしかして動揺してるのか。
「・・・隠れ里を教えるわけにはいかない。」
ふふん、正論を言っているつもりでも、それは単なる言い訳にすぎないのだよ、ライドウ。確かに伽耶ちゃんに、隠れ里を特定できるような情報を伝えることはできないだろう。
だけど。
「文でも電話でも、お前から連絡することはできただろう。」
「・・・外部と連絡をとることは、簡単には許されない。」
「おや、『葛葉』を言い訳にするのか?」
ライドウは返事につまり、顎をひく。ふと視線を感じタヱちゃんを見ると、咎めるような視線で俺を見ていた。はいはい、若人を苛めるのは大概にしますよ。
「この話はまた今度にしよう。ライドウ、そこに突っ立ってないで、鳴海スペシャルでもいかがかな?」
雰囲気を良好にすべく、俺はウィンクしてみた。
「・・・いえ、大学芋を買いに出かけてきます。」
やっぱり、男相手には効かなかったか。女性相手でも、効くことはそうはないけど。
「まあ待て、芋なんて後でいいから・・・」
ライドウは俺の言うことなど聞かずに、学帽を目深に被り直し部屋から出て行ってしまった。




【あとがき】
アドバン王、まだ終わっておりません・・・(^^;)
今凪ちゃんがいいところ・・・!
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