ヴァニラ学園 6 [ヴァニラ学園]
WEB拍手お礼SSとして掲載していたものです。
ヴァニラウェア作品のプリンセスクラウン、グリムグリモア、オーディンスフィアのクロス物語となっております。
苦手な方は、ご注意ください。
よろしければ「続きを読む」からどうぞ~。
シドラエル、ヴォーグロド、グリゼルダ、オニキスが出てきます。
●遠くの君(Side:S)
3年に進級し姉のエリエルとは別のクラスになったシドラエルだが、何一つ杞憂はなかった。
1年のとき一緒だったグリゼルダが同じクラスだからだ。
グリゼルダは、しっかりした女性という点ではエリエルと似ていたが、人一倍責任感が強く無理をしがちという点では妹のグラドリエルに似ていた。
またはっきりした性格であり、俗に言う“不良”に対する態度も他の生徒の時と変わりない。
―――そう、あの人に対しても。
「オニキス、ヴォーグロド。」
ちょうど考えていた“あの人”の名前がグリゼルダの口から洩れ、シドラエルの心臓はドキリと高鳴った。
正面から二人、男子生徒が廊下を歩いてくる。
シドラエルは二人の顔を見つめることもできず、視線を斜め下に向けた。
グリゼルダは渋い顔で、
「お前たち、前から言っているだろう。踵をつぶすな、ポケットに手を入れて歩くな。」
と、それぞれ二人に注意する。
オニキスは「へいへい」と肩を竦めただけだったが、ヴォーグロドは黙ってポケットから手を出した。
特にシドラエルに話しかけることもせずに、そのままオニキスとヴォーグロドは通り過ぎた。
ふぅ・・・とシドラエルは小さく息を吐き、体の緊張を解く。
「全く、オニキスめ・・・。風紀が乱れるというのに・・・。」
グリゼルダは毒づきながら、歩を早める。
シドラエルはグリゼルダの後を追いつつ、後ろを振り返りヴォーグロドの背中を見つめた。
―――ちゃんと話せるようになりたい。グリゼルダのように・・・。
そう願うものの、自分がグリゼルダと同じように出来るとは思っていない。
結局自分には背中を見つめるとこくらいしかできないのだと、シドラエルはグリゼルダに気付かれぬよう悲しく微笑んだ。
●遠い君(Side:V)
「そう言えば、お前知っているか?」
グリゼルダとシドラエルの姿が見えなくなったところでオニキスはヴォーグロドに話しかけた。
「どこかのお姫様が図書館デスクに座ると、貸出率が格段アップするって話。」
「・・・・・・。」
ヴォーグロドはたいして驚いていないようだった。
「ふぅ~ん・・・とっくの昔に知っていたか。」
オニキスは横目でヴォーグロドを見るが、顔色一つ変わっていない。
表情を隠すのがうまい男だと、感心する。
「お姫様は笑顔で応対するそうだ。その笑顔がたまらないって、一年のガキどもまで騒いでいる。」
「・・・そうか。」
少しだけ頬が動いた。
だが、それもヴォーグロドとの付き合いが長いオニキスだから気付くのであって、新しいクラスメイトだったら見過ごしていたであろうわずかな変化であった。
“お姫様”についてはそれ以上言及せず、オニキスは話題を変えた。
―――彼女が大勢に好かれるのは当然のことだ。
ヴォーグロドは冷静にオニキスの言葉を受け止めていた。
美しい容姿に優しい微笑み、そして綺麗な声。
人を穏やかにさせる要素を、彼女は全部持っている。
だから自分がこれほど恋い焦がれているのも至極当然なこと。
―――強く念じると、気持ちが通じる能力があったらどれだけ良いだろう。
柄にもなくヴォーグロドはそんなことを考えた。
しかし例えそういう能力があったとしても、自分が使うことは決してないだろう。
―――結局、俺には彼女を遠くから見つめることしかできないのだ・・・。
シドラエルの笑顔を思い浮かべ、ヴォーグロドは自嘲した。
【あとがき】
「ヴォーグロド×シドラエル~!」ってな感じで書き始めましたが、二人ともウジウジしちゃってる話になってしまいました・・・(^^;)
書き終えたときに、「二人して片想いする暇あったら、さっさとくっついちゃいなさぁ~い」と我ながら思いました(笑)。
ヴァニラウェア作品のプリンセスクラウン、グリムグリモア、オーディンスフィアのクロス物語となっております。
苦手な方は、ご注意ください。
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シドラエル、ヴォーグロド、グリゼルダ、オニキスが出てきます。
●遠くの君(Side:S)
3年に進級し姉のエリエルとは別のクラスになったシドラエルだが、何一つ杞憂はなかった。
1年のとき一緒だったグリゼルダが同じクラスだからだ。
グリゼルダは、しっかりした女性という点ではエリエルと似ていたが、人一倍責任感が強く無理をしがちという点では妹のグラドリエルに似ていた。
またはっきりした性格であり、俗に言う“不良”に対する態度も他の生徒の時と変わりない。
―――そう、あの人に対しても。
「オニキス、ヴォーグロド。」
ちょうど考えていた“あの人”の名前がグリゼルダの口から洩れ、シドラエルの心臓はドキリと高鳴った。
正面から二人、男子生徒が廊下を歩いてくる。
シドラエルは二人の顔を見つめることもできず、視線を斜め下に向けた。
グリゼルダは渋い顔で、
「お前たち、前から言っているだろう。踵をつぶすな、ポケットに手を入れて歩くな。」
と、それぞれ二人に注意する。
オニキスは「へいへい」と肩を竦めただけだったが、ヴォーグロドは黙ってポケットから手を出した。
特にシドラエルに話しかけることもせずに、そのままオニキスとヴォーグロドは通り過ぎた。
ふぅ・・・とシドラエルは小さく息を吐き、体の緊張を解く。
「全く、オニキスめ・・・。風紀が乱れるというのに・・・。」
グリゼルダは毒づきながら、歩を早める。
シドラエルはグリゼルダの後を追いつつ、後ろを振り返りヴォーグロドの背中を見つめた。
―――ちゃんと話せるようになりたい。グリゼルダのように・・・。
そう願うものの、自分がグリゼルダと同じように出来るとは思っていない。
結局自分には背中を見つめるとこくらいしかできないのだと、シドラエルはグリゼルダに気付かれぬよう悲しく微笑んだ。
●遠い君(Side:V)
「そう言えば、お前知っているか?」
グリゼルダとシドラエルの姿が見えなくなったところでオニキスはヴォーグロドに話しかけた。
「どこかのお姫様が図書館デスクに座ると、貸出率が格段アップするって話。」
「・・・・・・。」
ヴォーグロドはたいして驚いていないようだった。
「ふぅ~ん・・・とっくの昔に知っていたか。」
オニキスは横目でヴォーグロドを見るが、顔色一つ変わっていない。
表情を隠すのがうまい男だと、感心する。
「お姫様は笑顔で応対するそうだ。その笑顔がたまらないって、一年のガキどもまで騒いでいる。」
「・・・そうか。」
少しだけ頬が動いた。
だが、それもヴォーグロドとの付き合いが長いオニキスだから気付くのであって、新しいクラスメイトだったら見過ごしていたであろうわずかな変化であった。
“お姫様”についてはそれ以上言及せず、オニキスは話題を変えた。
―――彼女が大勢に好かれるのは当然のことだ。
ヴォーグロドは冷静にオニキスの言葉を受け止めていた。
美しい容姿に優しい微笑み、そして綺麗な声。
人を穏やかにさせる要素を、彼女は全部持っている。
だから自分がこれほど恋い焦がれているのも至極当然なこと。
―――強く念じると、気持ちが通じる能力があったらどれだけ良いだろう。
柄にもなくヴォーグロドはそんなことを考えた。
しかし例えそういう能力があったとしても、自分が使うことは決してないだろう。
―――結局、俺には彼女を遠くから見つめることしかできないのだ・・・。
シドラエルの笑顔を思い浮かべ、ヴォーグロドは自嘲した。
【あとがき】
「ヴォーグロド×シドラエル~!」ってな感じで書き始めましたが、二人ともウジウジしちゃってる話になってしまいました・・・(^^;)
書き終えたときに、「二人して片想いする暇あったら、さっさとくっついちゃいなさぁ~い」と我ながら思いました(笑)。
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