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ヴァニラ学園 5 [ヴァニラ学園]

WEB拍手お礼SSとして掲載していたものです。
ヴァニラウェア作品のプリンセスクラウン、グリムグリモア、オーディンスフィアのクロス物語となっております。

苦手な方は、ご注意ください。



よろしければ「続きを読む」からどうぞ~。
ポートガス、プロセルピナ、ガブリエル、マルガリタが出てきます。



●売店



「よう、ばあさん!焼そばパン3つ!」
低音でよく響く声を耳にし、店の奥でのんびりお茶を飲んでいたおばあさんはひょっこり顔を出した。
「はいよ、今日も元気がいいねぇ。」
馴染みの顔ににっこり笑い、おばあさんはポートガスにパンを手渡した。

おばあさんとポートガスの付き合いは、彼がヴァニラ学園に入学した時から始まる。
学園に来る途中、おばあさんは持病の腰痛に襲われ、歩道に座り込んでしまっていた。
折しも入学式当日、助けを呼ぼうにも生徒はもう体育館に詰めているし、ガンメル学園長の挨拶も既に始まっていた。
―――とりあえず痛みが治まるまでじっとしてようかね・・・。
おばあさんが腰をすすりながらそう考えていた時、影がおばあさんに重なった。
「ばあさん、どうかしたのか?」
振り返ると、真新しい制服に身を包んだ男子生徒が立っている。
「腰の痛みが出たみたいでねぇ。」
「大丈夫か?保健室連れてくから俺に乗っかりな。」
「ほら!」と、その生徒はおばあさんの前に背を向けしゃがみこんだ。
「そんなこといいよ。それよりあんたこそ入学式はどうしたんだい?」
「構うもんか、いいから早く!」
男子生徒は頑として譲らないようだ。
おばあさんは「すまないねぇ」と言って、背中におぶさった。
「気にすんな。困った時はお互い様だ。それに校長の話は長いって決まってるからな。」
そう言って笑った男子生徒は、死んだ夫の笑顔とよく似ていた。

それから3年間、おばあさんはポートガスを見守り続けた。
入学式をすっぽかしたこと以外にも、3階から落ちても無傷だったことや、オデット先生の熱烈なアプローチから逃げるため体育館の屋根に登ったこと、他にもなかなか型破りな伝説を学校に残していた。
そのポートガスも今年で学校を去る。
大学に進むかどうかは聞いていないが、売店に足を運んでくれるのは今年限りとなるのだ。
「さみしいねぇ・・・。」
思わず口に出してしまい、おばあさんは慌てて口を手で押さる。
「ん?なにが?」
「いやね、大のお得意様が今年で卒業かと思うと、ちょっとね。」
「卒業ねぇ・・・。」
ポートガスは焼そばパンのビニールをはがし、パクリと齧りついた。
「その前に、俺の出席日数で卒業できるかどうかが問題だな。」
「なに言ってるの、大丈夫。」
おばあさんの慰めの言葉に「どうだかなぁ。」とポートガスと首をかしげ笑う。
「まあ俺としては、ばあさん特製の焼そばパンがもう一年食べられるって言うのは魅力的だったりするんだけどな。」
「馬鹿なことを言うんじゃありませんよ。」と言ってはみたものの、嬉しくないと言ったら嘘になる。
顔をくしゃくしゃにして笑うポートガスは、やはり亡き夫によく似ているとおばあさんは思った。





●幼稚園



今日もヴァニラ幼稚園には笑い声と悲鳴が上がっていた。

「プロセルピナ、やめるリラ~。」
ガブリエルは、すべり台のてっぺんにいる少女を見上げながら言う。
少女の手にはカエルが一匹しっかりと握られていた。
「もしかしてガブリエル、カエルが怖いの?面白いから、もっとこうしてやる!」
そう言って「あはは」と大笑いし、プロセルピナはカエルをガブリエルに投げつけた。
「ぎゃ~!!」
カエルはどんぴしゃでガブリエルの頭に命中し、それから草むらの中に逃げてしまった。
「あ~!なんてこと!」
プロセルピナは急いですべり台から滑り降り、ガブリエルの体をドンと突き飛ばした。
「カエルが逃げちゃったじゃない!ガブリエル、どうしてくれるの?」
「プロセルピナが投げるからルル~。」
「うるさ~い!さっさと捕まえてきなさいよ!」
プロセルピナが腰に手を当てふんぞり返っていると、
「あら、かわいいカエルちゃんですこと。」
聞き慣れない声が草むらの先の道路から聞こえてきた。
プロセルピナとガブリエルは顔を見合せ、声のする方へと駆け出す。
そこにはヴァニラ学園の制服に身を包んだ、眼鏡のおかっぱ頭の少女がいた。
ガブリエルには信じられないことだが、なんと彼女もプロセルピナ同様平気な顔でカエルを素手で触っていた。
「ちょっと!そのカエルはあたしのよ!」
プロセルピナは、びしっと少女を指さす。
彼女は突然現れた二人の園児に驚いたようだったが、
「あら、そうでしたの、ではお返ししますわね。」
と、プロセルピナにカエルを手渡した。
「それじゃあ」と手を振り去っていく少女の後ろ姿を見、プロセルピナは
「ふぅ~ん・・・中々やるわね・・・。」
ぼそり独り言をつぶやいた。
ガブリエルはプロセルピナが彼女に変な対抗心を燃やさないよう、心の中で祈った。
しかしガブリエルの祈りが天に届くよりも、プロセルピナの好奇心に火がつく方が早かったようだ。
「ガブリエル!いまの、誰だか調べるわよ!」
拳を握りしめ、燃えるプロセルピナを止める術を、ガブリエルは知らなかった。

程無くして少女の名前はマルガリタと知ることになる。
そして、対抗心ゆえか前にもましてプロセルピナのカエルへの執着は激しくなっていくのだった・・・。

―――誰かプロセルピナを止めてルル~。




【あとがき】
ヴァニラウェア作品にはプロセルピナといいマルガリタといいイングウェイといい、カエルネタ(?)が多いですね。
オデットはポートガスも好きなタイプだと思います・・・(笑)。
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